もの作り

ものづくりを通して、『失敗経験』から『確かな自信』を育むプログラム

「また失敗してしまった…」その経験、決して無駄にはしません。T&Nリサーシャの「ものづくり」は、計画・実行・改善のサイクルを安全な環境で体験し、失敗を乗り越える力を『自分なりの自信』に変えるきっかけを提供する、プログラムです。

なぜ、私たちは「失敗」を恐れてしまうのか?

過去の失敗経験は、私たちの心に「どうせまた、うまくいかない」という見えないブレーキをかけます。このブレーキは、新しい挑戦への意欲を削ぎ、行動をためらわせ、自己肯定感を静かに蝕んでいきます。

しかし、失敗そのものが問題なのではありません。本当の問題は、失敗から立ち上がり、次に活かす『経験』を積む機会が少ないことです。

T&Nリサーシャの「ものづくり」は、職業訓練ではありません。ここは、失敗が許される『安心の土台』の上で、意図的に「小さな失敗」と「それを乗り越える成功」を繰り返し体験し、あなたの自信を育むための特別な場所です。

自信を育む「ものづくり」の3つの力

1. プロセスを「やり遂げる力」

まずは簡単な作品から始め、「見本通りに作る」「手順を守る」という経験を積みます。一つ一つの工程をクリアする小さな「できた!」の体験が、複雑な課題にも取り組める、着実な自信へと繋がります。

2. 失敗から「学び、修正する力」

「間違えた」は「終わり」ではありません。織物のように、間違えても糸をほどけば元に戻せる活動を通して、「失敗しても、やり直せる」という安心感を身体で覚えます。この経験が、現実の生活で困難に直面した時の、心の支えとなります。

3. 自分の特性を「客観視する力」

作品は、あなたの思考や感情を映し出す「鏡」です。「なぜかいつも同じ箇所で間違えてしまう」「この作業は驚くほどスムーズに進む」といった発見から、データも活用しながら、自分の得意・不得意を客観的に知ることができます。


あなたの「好き」から始める、もの作りプログラム

当施設では、代表的なプログラムとして「革細工」「織物」「木工」をご用意しています。

しかし、本当に大切なのはあなたの「やってみたい」という気持ちです。そのため、ご希望に合わせて、他のプログラムに取り組むことも可能です。「こんなものを作ってみたい」というあなたの希望を、ぜひ聞かせてください。

いずれにせよ、どの活動も、技術の優劣を競うものではありません。むしろ、作る楽しさや、完成した時の達成感を味わうことを最も大切にしています。

革細工

特徴 目安 こんな方・こんな時に
やり直しやすさ 少し難しい 一度切ったり、穴を開けると元に戻せないため、慎重さや計画性が身につきます。
平面 or 立体 平面→立体 絵を描くように、平面で色や模様のデザインそのものに集中できます。
力の加減 調整できる 刻印を打つ際は力が必要ですが、縫う作業は繊細です。

革細工では、主に以下の技法を用います。

  • スタンピング
  • モデリング
  • カービング

 そして、製作段階は以下のようになります。

  1. 基礎:小銭入れ・眼鏡ケース・ペン皿(小)・ペン皿(大)
  2. 応用:札入れ・マチ無しセカンドバッグ・化粧ポーチ
  3. 創造:メルヘン模様眼鏡ケース or メルヘン模様札入れ・自由作品

織物(北欧織り)

特徴 目安 こんな方・こんな時に
やり直しやすさ やさしい 間違えても糸をほどけば、ほぼ完全に元に戻せます。そのため、失敗を恐れずに挑戦できます。
平面 or 立体  平面が中心 絵を描くように、平面で色や模様のデザインそのものに集中できます。
力の加減 ほぼ不要 力を必要としないため、リラックスして取り組めます。

織物では、主に以下の技法を用います。

  • 平織り
  • つづれ織り

 そして、製作段階は以下のようになります。

  1. 基礎:敷物1・敷物2・ポシェット1・ポシェット2・敷物3
  2. 応用:敷物4・敷物5・敷物6
  3. 創造:敷物7・タペストリー・自由作品
【コラム】作品は「自分を映す鏡」:ある利用者さんの物語

ある利用者さんは、織物でポシェット作りに挑戦しました。

ポシェット1

まず、最初の作品(ポシェット1)では、見本をよく確認せず、2枚作るべき同じ柄の布が、それぞれ違う模様になってしまいました。そして、ご本人は「職場でも同じような失敗が多かった」と振り返ります。

ポシェット2

しかし、この「失敗」が転機となります。つまり、自分の「確認を怠る」という特性に気づき、意識して見本を見るようにした結果、次の作品(ポシェット2)では、2枚とも完璧に同じ柄に仕上げることができました。

このように、この経験は、単に織物が上達したということ以上の意味を持ちます。なぜなら、もの作りを通して自分の課題と向き合い、それを乗り越えたという成功体験が、「自分も変われる」という大きな自信に繋がったからです。これこそが、まさに『理解の壁』を乗り越えた瞬間でした。そして、この経験は、私たちの「もの作り」による自己理解支援が目指すものを示す好例です。

木工

特徴 目安 こんな方・こんな時に
やり直しやすさ 調整できる 切りすぎたり、削りすぎると元に戻せませんが、少しずつ進めれば調整は可能です。
平面 or 立体 立体が中心 パーツを組み上げ、立体的な構造物を作る達成感が味わえます。空間認識を使います。
力の加減 やや必要 木材を切る、削る、磨くといった作業にある程度の力が必要です。

木工では、主に以下の技法を用います。

  • 手彫り
  • 寄せ木細工

 そして、製作段階は以下のようになります。

  1. 基礎:ペン立て(小)・仕切り入りペン立て(大)・4つ仕切りペン立て・犬のペン立て・状差し(小)
  2. 応用:コースター・デスクオーガナイザー
  3. 創造:小箱・状差し(大)・自由作品

もの作りだけが、すべてではありません
もちろん、もの作りへの参加は、あくまで選択肢の一つです。
「今日は少し疲れているな」「誰かと話したい気分だな」
もし、そんな日には、無理に作業をする必要はありません。

例えば、スタッフや他の利用者さんとお茶を飲んだり、静かに本を読んだり。
このように、あなたが安心して過ごせること、そのものが回復への大切な一歩だと、私たちは考えています。


まずは「個別体験相談(無料)」から

ご自身の状況に、どのプログラムが合うか迷われている方もご安心ください。まずは「個別体験相談(無料)」で、専門スタッフがあなたのお悩みを丁寧に伺い、最適なプログラムを一緒に考えます。


このような方におすすめです

  • 失敗しても、次に繋がる経験として活かしたい
  • 具体的な活動を通して、自分なりの自信を育みたい
  • 落ち着いて集中できる作業に取り組みたい
  • 物事を計画的に進める力を身につけたい

よくあるご質問

なぜ、もの作りを行うのでしょうか?

もの作りは、単に手を動かすだけでなく、計画性、集中力、問題解決能力、そして完成の喜びを通じて「自己肯定感」を育む多面的な活動です。私たちは、この活動を通して、ご自身の「こころの状態」、「行動パターン」、「集中力や忍耐力」、そして「ストレスへの対処」といった多角的な側面を体験的に学び、成長のきっかけを掴んでいただきたいと考えています。

例えば、もの作りの際の決まった動作をデータとして記録・分析することで、ご自身では気づきにくい脳の働きの特性や、心身の状態の変化を間接的に見ることができます。しかし、これはあくまで多角的な自己理解の一側面です。私たちは、もの作りを通じて得られる達成感や、失敗から学び修正するプロセス、そして集中することで得られる心の平穏など、生物学的要因だけでなく、心理的・社会的な側面からも、ご利用者様の「より良い状態への改善」を支援します。