視える化

photo by はむぱんさん

 視える化では、もの作りの動作を複数のセンサーを使用して数値化します。そして、その数値の継時的変化と日常生活で起こった出来事とを照らし合わせることで、どのような出来事がもの作りの動きに影響を与えるかを調べます。
 数値の変化は人によって異なり、変化の原因もそれぞれです(引っ越し、結婚、就職、人の存在、季節など)。これまでにどのような変化があったか興味のある方はこちら
 視える化は希望者のみに限ります。また、視える化を希望される場合、同意書への記入をお願いいたします。

 

革細工

 

 革細工では、以下の項目を計測します。

  • 指定された刻印を選択できるか
  • 指定された回数で刻印を打てるか
  • 刻印を打つ時に力加減ができるか
  • 木槌の振り幅を制御できるか

 

織物

 

 織物では、以下の項目を計測します。

  • 手順を間違えずに織ることができるか
  • 指定時間内に何回織ることができるか

 

視える化の流れ

 

これまでの視える化の例

視える化では、現在、提供している以下の「もの作り」を数値化します。

  • 革細工
  • 織物

そして、「もの作り」の工程の流れの中で、作業の回数や時間などの変化を確認します。
これまでに視える化した利用者さんの変化を以下に紹介します。

ADHDで双極性障害を併発した利用者さん(回数その1)

革細工の木槌で刻印を打つという動作を回数で視える化してみると、ADHDで双極性障害を併発した利用者さんでは次のような変化が見られました。
青い線はこの利用者さんの数値です(A)。
赤い線はこれまでに計測してきた利用者さんたちの平均値です(All)。
この平均値で表すように、多くの利用者さんは刻印を50回打てるようになると、その回数が大きく変動することはほとんどありません。
ところが、この利用者さんは、フリーター時代は安定して刻印を50回打つことができませんでした。
また、同じ職場でフリーターから正社員になった正社員時代でも、就業期間3年目辺りから安定して刻印を50回打つことができませんでした。
カウンセリングで二つの時期に共通していたことは、将来に対する漠然とした不安でした。
将来に対する不安などは、当施設の「もの作り」の視える化や職業訓練センターなどを利用し、仕事でどういった問題が起こるかを把握していくことで解消していきました。

20年以上引きこもっていた利用者さん(回数その2)

1年毎の来所回数を視える化した場合、この利用者さんは最初の1~2年目で数回しか来所していないことが分かります。
この間、来所から次の来所まで空いた最長期間は約4か月半でした。
それでも、3~4年目には約40回前後まで来所回数が増え、5~6年目にはその倍の80回前後まで来所回数が増えました。
利用当初はバスなどの公共交通機関も利用できず、ご家族が送迎をしていました。
時間は掛かりますが、本人のペースに合わせて徐々に環境変化を促した結果、公共交通機関を利用できるようになりました。
その結果、行動範囲が広がり、就労支援施設にも通えるようになりました。

統合失調症から双極性障害に変わった利用者さん(時間)

革細工の刻印を打って移動させるまでの時間を視える化してみると、統合失調症から双極性障害に変わった利用者さんは次のような変化が見られました。
うつ状態を自覚し始める前後は1.4msぐらいでした。
口数も少なく、家でもぼーっとして過ごすことが多かったそうです。
ところが、躁状態を自覚し始めると、1.1msぐらいになって動作が早くなっていきました。
動作が早くなる以外に、日常の変化としては2年間やめていた喫煙や飲酒を再開しました。
また、服装もだらしなく、多弁になり、落ち着いて作業も出来なくなりました。
さらに、「もの作り」の計測中におやつを食べだすなど、今まで見られない行動も現れました。
ひょっとしたら動作が早くなっていったのは病気悪化の兆候だったかもしれません。
その後、この利用者さんは3回の入退院を繰り返しました。
1回目の入院は25日間、2回目の入院は206日間、3回目の入院は95日間でした。
この一件以降、時間の変化を再発の一つの基準にしてからは、再発は防げています。

復職したうつ病の利用者さん(その他)

革細工の刻印を打った時の衝撃の変化を視える化してみると、復職したうつ病の利用者さんでは次のような変化が見られました。
青い線はこの利用者さんの数値です(B)。
赤い線はこれまでに計測してきた利用者さんたちの平均値です(All)。
この平均値で表すように多くの利用者さんは、大体0.6~0.8Gの範囲で変動し、大体安定してくると0.7G付近に収束していきます。
ところが、この利用者さんの場合、週2回で当施設を午前中利用していた際は0.5~0.9Gの範囲で大きく変動していました(試行回数1~66回、約246日間)。
この変動のパターンとして、うつ症状の改善に伴って衝撃も上昇し、職場復帰に焦って無理をすると衝撃も下降しました。
このため、依頼先から指定された復職プログラムの条件を午前中のみに緩和しました(試行回数67~80回、約25日間)。
大体0.6Gを下回ると身体的疲労を訴える傾向が見られたので、0.6Gを下回った場合は土日の活動を抑え、試験的に2時間の復職から始めました(試行回数81~86回、約23日間)。
フルタイムの勤務時間にした当初は衝撃が0.5G近くまで大きく下降しました。
しかし、仕事内容を簡単なことから始め、衝撃が0.6Gを下回った場合は良く休むように疲労管理することで徐々に安定していきました(試行回数87回以降)。