原因不明の歯痛 とうつ病(50代女性)

原因不明の歯痛 リサーシャ
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Photo by acworks

当施設を利用していた50代女性で、家の新築による環境変化と愛犬の死を切っ掛けにうつ病を発症し、うつ病の回復後、 原因不明の歯痛 に悩まされていました。当施設に来てから、「もの作り」を通じて歯痛が精神的なものであることに気付き、自殺願望が消え、社会復帰したので紹介します。

 

 

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来所の切っ掛けとうつ病

この女性の場合、代表の関 京子が通っている鍼灸院の鍼灸師に紹介さえれたことが切っ掛けで来所してきました。

うつ病は、家の新築による環境変化と愛犬の死(ペットロス)が切っ掛けで発症した可能性があるとのことでした。

うつ病が発症したので、しばらく精神科病院に通院し、病状が良くなった頃から原因不明の歯痛に悩まされるようになったそうです。

当施設に来る前から歯痛のせいで若干の鬱状態にあり、歯痛の辛さから自殺願望もありました。

何をしていても、歯の痛みが忘れられず、楽しむことも出来ませんでした。

また、原因が分からないので不安が募るばかりでした。

さらに、当施設を利用する初期は、疲労感が抜けず、眩暈もひどく、予約をキャンセルすることもありました。

このときは、「何もする気にならない」という発言が多かったため、家事も出来ないのか尋ねました。

うつ病で何もできないからと言って家事までやらなくなると、日常生活を送れなくなるだけでなく、筋力や体力が低下してしまいます。

この結果、病状がさらに悪化し、回復が遅れてしまう可能性が高くなってしまいます。

幸いなことに家事は出来たので、家事は続けるように助言しました。

 

 

原因不明の歯痛

歯痛が起こり始めてからは、本人は歯が痛いと感じているので、当然のことながら最初は歯科医院を訪れました。

そして、何件もの歯科医院を渡り歩いても原因が分からず、時には歯痛の原因について歯科医と言い争いになることもありました。

歯の痛みに関して、歯科医院での検査でも特に異常が見られず、歯科医の勧めから心療内科、そして、精神科の受診へと移行しました。

歯科医院・心療内科・精神科以外に耳鼻科やペインクリニックにも通ったそうです。

しかし、ペインクリニックで痛みが治まったのは1~2日だけだったそうです。

歯の痛みを緩和するためにガムを噛んでいましたが、痛みが緩和される時とされない時があったそうです。

睡眠時の歯軋りなども歯の痛みの原因になるため、マウスピースも試したそうですが、効果はなく、歯痛の原因は不明のままでした。

原因不明の歯痛について調べてみると、以下のサイトを見つけました。

 

 

原因不明の非定型歯痛では三環系抗うつ薬の投与が有効であり、ペインクリニックでは今回の利用者さんも歯痛の治療で三環系抗うつ薬の投与を行っていました。

このサイトで紹介されているように、副作用の影響を考慮して、三環系抗うつ薬を徐々に増量しているようでした。

しかし、歯痛が治まるまで薬の増量がなされなかったせいか、効果は全くと言っていいほど持続しなかったそうです。

また、参考サイトでは他の抗精神病薬との併用も紹介されていたので、他の抗精神病薬との併用を主治医に相談してみたそうなのですが、全く取り合ってもらえなかったそうです。

歯の痛みを緩和するために薬が増えると、それも気分の落ち込みに繋がっているようでした。

 

 

革細工の動作計測におけるデータ変化

当施設では、うつ病などの脳の機能障害である精神病が「もの作り」にどのような影響を与えるかを調べるため、革細工の一部の動作を継時的に計測しています。

革細工の動作計測は、利用者さんの都合によって定期的に行われません。

このため、一週間おきに計測される日もあれば、数か月後に計測される日もあり、場合によっては翌日に計測されることもあります。

この利用者さんは当初、革細工の動作計測を頑なに拒んでいました。

しかし、他の利用者さんとの交流が増え、利用者さんからの勧めもあって動作計測に参加することになりました。

刻印を打った回数の変化

革細工の動作計測では、刻印を打つ動作として「刻印(ベベラB200)を木槌で連続2回打って刻印をずらす」を繰り返して、革に一直線に引いた5cm幅の線をなぞります。

この線を綺麗になぞるには、刻印をずらす幅を細かくして打つ必要があります。

恐らく、刻印をずらす幅は慣れると最小1mm幅になるので、5cm幅で刻印を打つ動作は約40~50回繰り返されることになります。

このため、利用者さんに計測課題を行ってもらう場合、50回前後で刻印を打ってもらうように指示します。

刻印を打った回数を、これまでに計測した11人の利用者さんの平均値(青)と今回のうつ病の利用者さん(赤)とで比較してみました。

ちなみに、他の利用者さんと異なり、計測を始めるまでに、革細工でキーホルダー・印鑑ケース・ペンケースで刻印打ちを既に行っていました。

このため、計測で行う刻印打ちもすぐに出来るであろうと予測していました。

平均値では試行回数11回目で刻印を打った回数が40回を超えるのに対し、今回のうつ病の利用者さんでは試行回数5回目で40回を超えました。

また、平均値では試行回数11回目以降は40回を下回ることがないのに対し、今回のうつ病の利用者さんでは所々で40回を大きく下回ることがありました。

この原因として、例えば、試行回数21回目を行った日は、歯の痛みがひどい日でした。

また、試行回数25回目を行った日は、それ以前にあった冠婚葬祭で疲労がたまっていたそうです。

試行回数25回目以降は、冠婚葬祭での疲労が中々取れず、その前までは偶にあった歯の痛みが治まらず、その後は歯の痛みを再び訴えるようになりました。

試行回数29回目の日も歯の痛みがあり、計測にも集中できず、刻印を打った跡を見て若干雑になっている自覚もあったそうです。

試行回数30回目の日は、新しい治療によって歯の痛みが若干収まったせいか、課題の動作を50回行うことが出来ました。

しかし、試行回数31回目の日は、地域行事で休みが取れず、前日まで疲労が取れなかったそうです。

計測で得られたデータの変化を基にカウンセリングを行ったところ、刻印を打った回数が30回付近まで下がった場合、歯の痛みや疲労を訴えることがありました。

また、試行回数29回目を行った日の会話から、自分の状態を刻印の跡から把握する節も見られるようになってきました。

決められた範囲の回数で打てるかどうかは歯の痛みや疲れ具合に影響されるようでした。

ゴム板への衝撃の変化

革に刻印を打つ場合、その革の下にレザークラフト用のゴム板を敷きます。

当施設が行っている革細工の動作計測では、このゴム板にもセンサーを取り付け、木槌で刻印を打った時の衝撃を計測しています。

衝撃値の目安については、当施設の代表である関 京子の数値0.7Gを基準にしました。

また、0.8Gを超えると革が破れ、0.6Gに満たないと刻印の跡がつきにくかったということもありました。

このため、現在では、利用者さんには木槌を打つ際、0.6Gから0.8Gに納まるように木槌の振り幅や力加減を調節するように指示しています。

 

刻印を打った際のゴム板への衝撃(加速度)の変化を、これまでに計測した11人の利用者さんの平均値(青)と今回のうつ病の利用者さん(赤)とで比較してみました。

平均値では試行回数11回目の日から衝撃の変化が0.6~0.8Gの間で推移するのに対し、今回のうつ病の利用者さんでは中々この0.6~0.8Gの間に納まりませんでした。

ゴム板への衝撃を調節する場合、課題の初期では経験がないため、どの程度の振り幅や力加減が何Gに相当するかは分かりません。

このため、計測の初期は、衝撃が強すぎたり弱すぎたりすることがほとんどで、色々と試行錯誤しながら徐々に指示した範囲内に納まります。

利用者さんによっては、ある時期からこの範囲に納まるようになり、日常の出来事と連動するように上下変動するようになる場合があります。

しかし、ゴム板への衝撃の変化とカウンセリング内容を照らし合わせてみても、刻印を打った回数のように日常の出来事と連動するような変化は見られませんでした。

これは、今回のうつ病の利用者さんが衝撃の変化に関しては学習過程で木槌の扱いをまだ試行錯誤をしていたためと考えられます。

木槌の振り幅と動きの滑らかさ

木槌の扱いがまだ試行錯誤の段階で衝撃を調節できるかどうかの判断に木槌の振り幅が挙げられます。

実際に、木槌の振り幅をこれまでに計測した11人の利用者さんの平均値(青)と今回のうつ病の利用者さん(赤)とで比較してみました。

平均値では7cm付近まで緩やかに下がっていきます。

試行回数31回目を超える長期な計測を行っている利用者さんの多くは、最終的には5cm付近で安定して推移します。

それに対して、今回のうつ病の利用者さんは、試行回数12回目まで上下変動を繰り返しています。

試行回数6回目の日は、「前日に就職活動のために職業安定所に行き、履歴書を書いて疲れてた」とのことでした。

そして、試行回数10回目の日も前日に職業安定所に行っていたそうです。

試行回数16回目以降、27回目で大きく上昇した以外は10cm付近で推移しています。

社会復帰して当施設を利用しなくなるまでの間に5cmになることはありませんでした。

試行回数27回目の日に振り幅が大幅に上昇した理由は、計測前に行っていた作業が影響しています。

具体的には、ハトメ抜で革に穴を空ける作業で、この作業ではハトメ抜を強く叩くために振り幅が大きくなります。

他の利用者さんでも、この作業を行った後に計測を行うと同様の現象が見られました。

慣れないうちは動作の切り替えが中々難しいようです。

このように、木槌の扱いに慣れていない場合、計測の前日や直前に起こった出来事によっては、木槌の振り幅に大きな影響が出ます。

しかし、これまでの利用者さんの変化を見ても、木槌の扱いに慣れてきたり、木槌の振り幅に影響を与えるような出来事に慣れてくると、このような変動は見られなくなっていきます。

実際、その後も職業安定所に通う日がありましたが、その翌日の計測で影響を受けたような変化は見られませんでした。

 

その他の数値の変化には、躍度が挙げられ、躍度は動きの滑らかさの指標として用いられます。

基本的には動きが滑らかになると躍度は小さくなります。

他のデータと同じように平均値(青)と今回のうつ病の利用者さん(赤)とで比較してみました。

平均値では躍度の変化が緩やかに下降していくのに対し、試行回数21回目の日までは上下変動を繰り返し、それ以降は緩やかに下降していきます。

試行回数17回目までは、平均値に比べて躍度が小さいので、動きが滑らかなように思えます。

しかし、実際には木槌の振り方による力加減が分からず、緊張していたり、振り幅を調節しようとして、動きが遅くなる場合があります。

 

基本的には、動きが遅くなると、躍度も小さくなります。

速度の変化と比較してみると、試行回数11回目までは基本的には躍度が小さいと速度も遅くなっています。

恐らく、今回のうつ病の利用者さんの場合、試行回数11回目までは木槌の扱いに慣れていません。

そして、学習している最中で、試行錯誤をしている段階ではないかと思います。

とは言え、試行回数19回目では、躍度と速度との関連した変化が見られませんでした。

この原因として、速度は木槌を振った時の最高速度を表しており、躍度は変化量の累積値です。

このため、仮に同じ速度でも、躍度が変化する期間が長く、かつ変化量が大きければ、その累積値は大きくなります。

ちなみに、試行回数19回目の日はいつも必要だったガムが初めて必要がなかった日だそうです。

 

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当施設での変化

当施設に来た当初は、歯の痛みが原因不明であるため、歯の痛みが治まるかどうかという不安や痛みのストレスが強く、自殺することを考えることが多かったそうです。

また、家を出る機会が少なく、家事以外に手芸やTV、昼寝、インターネット検索で一日を家で過ごすことも多かったそうです。

インターネット検索では主に自分の病気のことについて調べ、原因が分からずに調べても無駄であることが分かっていても、調べずにはいられませんでした。

インターネットを調べても悪い結果しか見当たらず、その結果、落ち込んで、うつ状態になるという負のスパイラルに嵌まっていました。

自分の日常生活がどのようなパターンかを知ってもらうため、当施設に来た当初から日課表をつけてもらうことにしました。

これは、日頃、どのように生活しているかを可視化し、生活改善を促すことが目的です。

次に、家にいる期間が長いと他者との交流が億劫になるので、できるだけ他の利用者さんと交流できる時間帯に来所してもらうようにしました。

また、「もの作り」は、共通の話題になりやすく、交流を持ちやすくなります。

こうすることで、他の利用者さんとの交流が増え、その中で計測サービスに対する抵抗感が薄れていったと思われます。

実際に、他の利用者さんが計測しているのを見聞きする中で、それが一つの話題となり、他の利用者さんに自分から計測について質問することもありました。

そして、計測サービスを受けるようになったのも、他の利用者さんからの勧めが大きかったと思われます。

日課表・「もの作り」・計測を行うことで、次のような変化が見られました。

 

まず、日課表では、最初は家事・手芸・読書・TV・インターネットなど室内での活動が多かったのに対し、運動施設や健康施設、図書館や散歩など外出する機会が増えました。

「もの作り」では、革細工の刻印打ちや穴あけが楽しくなり、特にこの作業では穴あけをする時は歯の痛みを忘れることもあったそうです。

また、革細工の縁を革紐で留める「かがり」という作業でも歯の痛みを忘れることができ、特にダブルステッチという作業では歯の痛みを全く感じなくなるということがありました。

この理由として、革細工は今までに経験がない作業であり、特にダブルステッチは非常に複雑で今回のうつ病の利用者さんはかなり集中していたようです。

このような経験をしたことは、原因不明の歯の痛みが学習によるものと自覚する切っ掛けとなったようで、本人も驚いていました。

当施設では、「もの作り」を行う場合、基本的には作品を段階的に複雑にしていきます。

そして、多くの利用者さんが同じ作品を作るので、利用者さん同士の会話で作品を通じた会話がしやすくなります。

今回のうつ病の利用者さんも例外なく他の利用者さんと作品を通じて会話するようになりました。

そのおかげか、最初に不審に思っていた計測サービスも他の利用者さんの勧めで参加するようになりました。

既に革細工の課題を行っていたので、計測で学習の変化は見られないと思っていましたが、そうでもありませんでした。

このため、自分がやっていることがどのように変化していくかを見ることが出来たのではないかと思います。

また、その過程の中で自分がどのようなことに影響を受けるかも予測できるようになったのではないかとも思います。

実際、社会復帰で以前勤めていた会社に再就職が決まった時、勤務する数日前から訓練として定時に会社近くまで行ったそうです。

こうすることで、今までの経験を活かして、自分の体調を確認しながら、自分なりに再就職のシミュレーションをしていました。

 

「もの作り」を行ったり、他の利用者さんとの交流を持ったりすることは、一見遊んでいるように見えます。

しかし、実は社会復帰をする上で重要な訓練になります。

例えば、当施設で「もの作り」の課題を選択した場合、約2時間の作業をすることになります。

統合失調症や双極性障害、うつ病のうつ状態で、手足をあまり動かさずに何もしていない期間が長いと、この2時間の作業すらままなりません。

これは、手足の筋肉が衰えているからです。

このため、何の下準備もなく、すぐに社会復帰しようとしても、仕事をするための能力が下がっているため、持続しません。

その結果、自己嫌悪に陥り、挫折して、ますます社会復帰から遠のいてしまう場合があります。

また、声を発したり、表情を作ったりすることにも筋肉が関わっており、会話をする機会が少ない場合、この筋肉も当然衰えます。

結果として、表情が乏しくなり、傍から見ると無表情に見えます。

それだけではなく、どのような話題をするかということも中々考えつかなくなります。

「もの作り」で他の人と同じ作品を作っていると、その過程で経験したことが一つの話題となります。

今回のうつ病の利用者さんも他の利用者さんと作品について会話をするようになりました。

また、この利用者さんは友人と長時間の会話をすることがあったのですが、最初の頃はその後で疲労を訴えることが多かったです。

しかし、社会復帰が近づく頃には、長時間の会話をしても疲労を感じることがなくなったそうです。

 

 

最後に

今回のうつ病の利用者さんは、当施設へは鍼灸院の鍼灸師に紹介されて来ました。

当施設に来る利用者さんの多くは、代表の関 京子と面識のある精神科医の紹介で当施設を訪れます。

精神科医以外の紹介で当施設を利用する方は非常に少ないです。

当施設を利用していた当初は、あまり他の利用者さんと会う機会が少なく、会話をすることも少なかったです。

しかし、徐々に他の利用者さんとの利用時間が重なるようになり、会話する機会も徐々に増えていきました。

実は、これはどちらの利用者さんにとっても都合が良いことです。

なぜなら、これまでに見てきた利用者さんの中には、最初は他人と空間を共有することを嫌がる人もいます。

また、当施設の環境にも慣れていない場合、この状態で他人と同じ空間を共有すると、環境のストレスに合わせて、他人がいることによるストレスでさらに疲れてしまう場合があります。

この結果、それまでは定期的に当施設を利用することが出来ていたのが、数週間も休むことになったりする場合があります。

このため、最初は本人の意思を確認してから、一人で「もの作り」を行いつつ、当施設の環境に慣れてもらいます。

そして、ある程度環境に慣れたら、他の利用者さんと同じ空間で「もの作り」を行ってもらいます。

 

私たちが社会に適応するための能力は、何気ない日常生活の中で学習することによって培われていきます。

環境に慣れたり、人に慣れたり、「もの作り」が出来るようになるのも全て学習の結果です。

時に、精神病の症状は学習能力を低下させる場合があるので、薬を飲むことで精神病の症状を抑え、学習可能な状態に持っていく場合があります。

薬を飲んだからと言って、今までの生活の中で獲得できなかった能力が獲得される訳ではありません。

また、統合失調症や双極性障害、うつ病のうつ状態で横になっている期間が長いと「いつもゴロゴロしている」と言った意見が聞かれます。

この原因には、薬が効いてないという可能性もありますが、横になっている状態が長いと体力や筋力が低下していて、日中動けるだけの力がなくなっているからです。

その他には、逆に、薬が効きすぎている、あるいは薬の副作用で動けなくなっている場合があり、薬の量を減らしたり、薬そのものを変えたりする場合があります。

これまで見てきた患者さんのご家族の中には、薬を飲んだら精神病が治ると考える方も少なくありません。

そして、薬を飲んでもあまり変わらないことに不満を訴えるご家族もいます。

しかし、薬は症状をある程度抑え、学習可能な状態にしているだけであって、社会復帰するためにはそれなりの期間をかけて学習能力と筋力・体力を回復させなければなりません。

 

今回のうつ病の利用者さんは、学習ができない期間や筋力・体力が下がる期間が短かったので、低下した能力の回復にかかる期間も約半年と短かったと思います。

当施設を利用した回数も42回と比較的少ない方だと思います。

計測回数も31回で、数値の変化から計測課題を完全に学習したとは言い難く、まだまだ日常生活の出来事によっては影響を受ける可能性があると思います。

精神病の怖いところは再発する可能性があるということです。

そして、その再発の原因の多くは、日常生活の環境要因にあると思います。

しかし、どのような環境要因が影響するかは計測課題の変化が安定するまでは分かりません。

長期的に計測課題を記録している人は、数値の変化が安定するため、ストレスになる出来事があると数値の変動が分かりやすいです。

また、その出来事に対して耐性ができると、数値が変動しなくなります。

逆に、耐性が出来ていない場合は、その出来事をしばらく避けてもらうように助言します。

社会復帰してしばらくの間は、特に環境が新たに変わった場合などは、ストレスを受けやすく、精神病が再発する可能性が高いです。

このため、当施設の利用者さんには環境が変わって仕事に慣れるしばらくは当施設の利用を勧めています。

今回のうつ病の利用者さんは、幸いなことに前の職場に再就職することが出来ました。

また、うつ病の発病原因はペットロスと家の新築による環境変化が重なったためなので、社会復帰に問題がなかったと思われます。

当施設で長期に計測課題を行っている利用者さんの中には、環境の変化に影響を受けたような数値変動が見られた方が何人かいます。

今後もこのような例を集めていけたらと思います。

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